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ケニアのアンボセリ国立公園 Amboseli National Park
アフリカ最高峰のキリマンジャロ山(標高5895m)の東北山麓に広がる火山灰に覆われた 標高約1000mの土地にある、総面積392km² (熊本市よりやや広い)のケニアの国立公園で す。
昔はマサイ・アンボセリ国立公園と呼んでいたのですが、この頃はただアンボセリ国立公園というようです。東アフリカで見ることができる野生動物の多くを見ることができます。キリマンジャロを眺めるにはベストと言われていますが、あの山の頂上はタンザニア領ですので、ここからの登山ルートはありません。
アンボセリへの行き方
ケニアの首都ナイロビからここに行く主要なルートは2ルートです。
一つはタンザニアとケニアの国境の町ナマンガから入るナマンガルート。もう一つはナイロビ・モンバサの幹線道路からエマリ付近を通って入るエマリルートです。この頃は後者のルートの方が早く国立公園の中に入れるので、こちらを使うサファリツアーの方が多いようです。
アンボセリ国立公園は、火山灰の降り積もった大地にあった古アンボセリ湖が干上がった土地に設けられています。植生としては乾燥サバンナとアカシアなどがまばらに生える疎林帯からなるところで、サイを除く東アフリカで見かける多くの動物を観察することができます。
エマリルートを辿りましょう
このルートをエマリから入る道に沿って紹介していきましょう。
立派に舗装されたナイロビ・モンバサを結ぶ幹線道路モンバサロードから右折し、ロイキトク方面への道C102に入り、さらにアンボセリに行く道103に入ります。この分岐点までは舗装道路ですがこの分岐点からアンボセリまでは、舗装のないいわば砂利道が続きます。舗装道路を走ってるうちでもキリンやシマウマなどの草食動物がサバンナや灌木地帯に出現することも多く、季節にもよりますが野生動物が比較的見やすいルートだと思います。
分岐点から3小一時間走ったあたりの北側に、簡単な軽飛行場があります。と言っても滑走路には舗装はなく、ただの土を固めただけのものですが、道路に並行して走っています。
ナイロビのウィルソン飛行場から軽飛行機が定期的に飛来するので、時間の無い方やお金に余裕がある方は利用されると良いでしょう。
C103道路から右折し、軽飛行場への小道を辿ると、滑走路を横切ってすぐにアンボセリ・ ソパ・ロッジに出ます。ここはかつてヘミングウェイが『キリマンジャロの雪』を執筆した 由緒あるロッジです。国立公園外のロッジですが泊まってみたいロッジの一つでしょう。
このロッジへ向かう小道への分岐点から数百mのところ、道の南側にマサイ族の住んでいる 村が現れます。
マサイ村の訪問
マサイの人たちは伝統的に牛などの遊牧を生業としていると思われていますが、ここのマサ イは遊牧というより牛などの放牧の他にアンボセリに来る観光客相手の物品販売や自分たち の生活をショーとして見せることを生業にしています。いわゆる観光マサイといわれる人々です。
まあそれを割り引いて考えても、ここでマサイの人々の伝統的な暮らしを再現した様子を見たり、彼らの手作りのお土産品などを購入するのはいい体験かもしれません。
こうした村の訪問見物は事前に旅行社に頼んでおけばよいのですが、見物料はサファリツ アーのオプション代に入っていると思いますが、撮影料は別でさらにチップを要求されると 思います。もし事前の予約が入っていない場合はドライバーに頼めばすぐ話をつけてくれる でしょう。その場合は、見物料・撮影料(観光客一人あたり30〜40$ぐらいでしょう)の 他にドライバーさんへのチップ(10$ぐらい)も忘れないように。
ただし、お土産品はナイロビのお土産屋さんより高い場合がありますので十分に値切った方 が良いかとは思います、撮影料やチップも、総額で数十ドルと、結構な金額になるのは、覚 悟してください。
このマサイの村を通り過ぎて左の方にいくつかのロッジが現れます。ここはまだ国立公園の 外なので料金も国立公園内のロッジより安いというのが売りですが、あまり設備は整ってい るとは言い難いというのは本当でしょう。
どこに泊まるにせよナイロビを出発して4時間は経っていますので到着した日はロッジに泊 まるのが普通だと思います。もしロッジに留まらずキャンプをする方は国立公園内にある キャンプ場で、もちろん料金を払ってキャンプをされると治安の点で安心と思います。キャ ンピング用品は事前に旅行会社に依頼しておけば、さほど高くない金額で借用できます。
国立公園に入りましょう
国立公園の東門はキマナゲートです。なかなかしっかりしたゲートで係員も通常は常駐しています。
料金などは時によって値上げされたり、あるいは今回のように客足が極端に少ない時などは割引料金が適用されたりしますので、出発前にネットなどで確認していくと良いと思います。入園料などの支払いや入園車の登録などはドライバーがやってくれますので、この時間を利用してゲートの奥にあるトイレで用を足しておくことをおすすめします。
また、効率よく野生動物を探すには、入園時にレンジャーの同行を頼むと良いでしょう。もちろん有料で、ゲートで支払います。
国立公園に入ればもうそこは野生動物の王国、いたるところに野生動物がうじゃうじゃいる と思ってる人も多いと思います。
その日の天候や気温などの関係で動物の出現時期が違うので何とも言えませんが、今までの 経験から言うと、草食動物達、ヌー、トムソンガゼル、グランツガゼル、インパラ、ウオーターバック、ハーテビー スト、バッファロー(アフリカスイギュウ)、キリン、イボイノシシ、シマウマなどは比較的容易に見ること ができます。最近はアフリカゾウが増えてきているので、小グループに出会うことも多いでしょう。
こうした野生動物を観察するには、小型の双眼鏡を持って行くと良いでしょう。もしなけれ ばレンタルもできます。また、動物写真を取るには望遠レンズ付きのデジカメをおすすめし ます。
こうした野生動物を観察するには、小型の双眼鏡を持って行くと良いでしょう。もしなければレンタルもできます。また、動物写真を取るには望遠レンズ付きのデジカメをおすすめします。
竜巻にご注意
ここのサバンナは埃が舞いやすく、また竜巻がよく起きます。もうもうと白っぽい土砂を巻 き上げてやってきたりします。万一竜巻に出会った場合は、小石などを巻き込んでガラスを 割るので、極力避けてください。
埃はかなり細かく、ちょっとした隙間からカメラなどに入り込んでくるので、常にケースや カバーを掛けておき、撮影時にはレンズ面(必ずフィルターを付けておいてください!)の 埃を払うと良いでしょう。埃よけにはメガネを掛けたりマスクをするのも効果的です。
サファリのルール
国立公園を横切るC103号線は舗装こそされてない砂利道ですが、非常に整備されているので 車が轍やぬかるみにはまって動けなくなることは、この道に関してはあまりないと思います。
ただC103 号線から横道にそれて入った場合は、もちろんルート以外は進入禁止なので小さ いルートがメインルートから分岐してますので、残念ながらと言うか当たり前ですが自然状 態に近い状態なので、ぬかるんだりあるいは車輪が轍にはまることも起きると思います。
これはケニアに限らずほとんどの国の国立公園や動物保護区に共通していますが、特定の地域を除いて、決められた道以外の場所に車が入ることを禁止しています。
またサファリをする時間も日の出から日の入りまでに限定され、よっぽどのことがない限り、これ以外の時間の園内走行は罰金を取られます。
又、殆どの場合、車両から降りることは禁止されています。理由はおわかりですよね。かつ て腹を下して人目につかなさそうなところで車を止めた時があったのですが、ブッシュの影 にキラッと光る目が。危うくライオンのランチになるところでした。どうしても我慢ができ なかったら、ドライバーさんにお願いすれば、見通しの良い場所で用を足させてくれるはず です。
窓から手足を出すことも動物に絵などを与えることも禁止されていますが、ただ、公園内では車の天井を上げることは許可されているので、サファリカーは必ず天井が上がるように改造されています。もちろん雨のときは天井を締めます。
疎林帯に行ってみよう
さてこのアンボセリ国立公園は実はサバンナと湿地帯との二つの大きな環境があるところで それぞれに特有の動物、鳥類あるいは昆虫などが見られます。
サバンナの動物たちは国立公園に入ってからたくさん見てきたと思います。
サバンナとはちょっと変わった植生を見てみましょう。
アンボセリ国立公園の中心ともいえるオルトカイOl Tukai地域は湧き水もあるのでアカシア の大木も見られる疎林帯となっています。こういう林には、ドグエラヒヒやサバンナモン キーなどの猿の仲間が群れをなして住んでいます。人ずれしているものも多く、車の窓や天 井が開いていると侵入してくるので、閉めるようにしましょう。
この地域の中心には老舗のオルトカイ・ロッジがあります。しっくりした雰囲気の落ち着いたロッジです。付近には適度に湧き水があるため動物がこれを求めてやってくるので、ここに泊まってのんびりすれば、ロッジ周辺に来る草食動物とそれを狙うライオン、ハイエナ、ジャッカルなどの肉食動物を見ることができます。
かなり昔ですが、オルトカイのバンダ(自炊可能な簡単な宿泊施設)に泊まった時に聞いた 話です。同じバンダに宿泊していたアメリカ女性が。日没後に数十m離れた母屋の食堂に夕 食に行った帰りに行方不明になったことがありました。数日後、金髪の絡まったライオンの ペレット(肉食動物が消化できなかった髪、骨などを吐き出した塊)が発見され、ライオ ンに襲われて彼らのディナーになったのがわかったということです。
要は、夜は部屋から出歩かないことです。
オブザベーションヒルに登ろう
この国立公園のもう一つの名所はオブザベーションヒルと呼ばれる小高い丘とその下に広がる湿地帯です。ここの湿地帯は乾季でも小さい池を伴うことが多く、展望の良さと動物の観察がしやすいというところでおすすめの場所です。
ただ最近の気候変動で、このあたりにはかなり大量の降雨があるため、オブザベーションヒルから北側の広大な土地が水没し巨大な湖、アンボセリ湖が出現することがありますので、その時はここにたどり着くのがちょっとした冒険になるかもしれません。
ここはアンボセリ内でも数少ない徒歩で登れる丘なので、ぜひ登ってみましょう。空気が済 んでいるときは遠くにキリマンジャロが眺められ、サバンナと湿地の織りなす光景は、アフ リカでも有数のビューポイントです。
フンのお話
登り口付近の駐車スペースは管理人も時々いるので安心です。ここにもシマウマやヌーが常 住しているらしいく、すぐ近くでこれらを見ることができます。彼らの糞が点在していると 思いますが、よく注意していると糞がコロコロと動いているのが見られるでしょう。これは 糞の団子に卵を産み付けるフンコロガシという昆虫が糞を転がしているからです。彼らが必 死に糞を運んでいるために清潔が保たれているのですね。このフンコロガシがよく見られる のもこの辺です。
もちろんサバンナの中でもバッファローやキリンなどの比較的水分の多い糞には蝶が群がっ ていることがあります。栄養補給を兼ねて給水しているようです。
しかし、こうした昆虫の捕獲はいけませんし、決められた地域以外では撮影のためにドアを開けて外に出ることは禁止されてます。
ちなみに、キャンプサイトで自炊する場合、焚き火の火付け用に象糞をよく使いましたが、カラカラに乾燥したゾウ糞はあっという間に燃え上がり、焚付用には最適でした。また、トロ火に利用するにはバッファローの糞が役に立ちました。これらの糞はキャンプサイトに点在していましたので往時は自由に使えましたが、今はどうなんでしょうか?
よく見られる肉食獣など
一時期乾燥が進んでいたアンボセリですが、ここ10年ほどは降雨量が増加して灌木が少し 増えてきていますので、草食動物が非常に見やすくなっていると思います。 もし軽飛行機を利用してここに来られるならば国立公園内のオルトカイにも簡易滑走路がありますので、直接ナイロビからこの国立公園内に入り、ロッジで車をチャーターして中 を見て一泊すれば、かなり堪能した Safari ができると思います。料金などはナイロビでは ロッジとサファリをパックしたの状態で販売してると思いますので、現地の旅行会社などに 問い合わせください。
ナマンガルート
さてこの中心のアンボセリロッジからナイロビへ戻る道ですが、雨季に出現する大きな湖、 アンボセリ湖の縁を通って西北に向かってナマンガに出る道を説明しましょう。C102号線 が舗装される前はこのルートがメインルートでした。
先ほどのオブザベーションヒルからタンザニアとの国境に向かって西方に進み、そこにある 小さいゲートから外に出て右折しタンザニア国境沿いにナマンガの町に向かうルートもあり ますが、利用者は少ないようです。
アンボセリ国立公園内の幹線道路(C103 号線)ですがナマンガゲートからナマンガの町までの道は舗装もなく、しかもタイヤに振動を与えるガタガタの道で常連たちは洗濯板道路と呼んでますが、ここを通る車は結構スピードを出すらしく、時々転覆をしている車などが見られます。
ナマンガは国境の町
ここはタンザニアとケニアの国境の街です。国境を挟み税関やImmigration Office があり両 替施設も整っています。もしこのルートでアンボセリ国立公園に入る場合は、空港で両替を してくるよりここで両替をした方がレートはいいということです。ここの国境は有刺鉄線や フェンスで仕切られていますが、こんな状態が国境沿いに延々と続くのではなくせいぜいイ ミグレーションを前後1キロほどしか設置されていません。
もちろんパスポートを持たず現地の人が行き来することはできますが。我々外国人は仮にも こうした鉄条網のないところを通って他国に入ることはやってはいけません。下手をすると XXされるかもしれません。
家畜や現地の人たちはこの辺を自由に往来をしてるように見えますが。
ここには第2次世界対戦時に捕虜となったイタリア人が強制労働のもとに作ったナマンガ・ リバー・ホテルがあります。ここの自慢のイタリア料理を食べるのもちょっとした楽しみだ と思います。
ナマンガからナイロビには頻繁にミニバスが出ており、もしサファリを安く済ませるのなら この逆ルートで、ナマンガから車をチャーターしてアンボセリ国立公園日帰りサファリも考 えられます。
この町を早朝に出て日没にゲートを出て帰って来れば、主だったところと主要な動物は見てこれるでしよう。
【川田秀文】