「歩き方カルチャー教室」はじまります!

アフリカの国立公園・自然保護区巡り2

ウガンダは赤道直下にある。

ウガンダのマーチソン・フォールズ国立公園 Murchison Falls Nacional Park

公園名になっているマーチソン・フォールズ

マーチソン・フォールズ国立公園は標高約1000mにある、総面積392km² (熊本市よりやや広い)のウガンダで最も広い国立公園で、ナイル川の2大支流の一つ白ナイル上流が公園を取り囲むように流れています。ヴィクトリア湖から流れ出たヴィクトリア・ナイルはカルマ・フォールズから南西部に流れ、マーチソン・フォールズからアルバート湖と、そこから北流するアルバート・ナイルによってデルタポイントと呼ばれる平原を半島のように取り囲み、北部の大湿地帯に流れて行きます。

サバンナや拠水林などの樹林帯、白ナイル沿いの湿地帯と変化に富む環境で、動物の種類も多く、自然環境をよく残しています。

マーチソン・フォールズ国立公園 への行き方

ウガンダの首都カンパラからここに行く主要なルートは2つあります。一つはカンパラから北上し、カンパラと北部最大の都市グルを結ぶ幹線道路を辿り、カルマゲートから国立公園へ入るルート。もう一つはカンパラから西進し、西部のクイーン・エリザベス国立公園を経てフォートポータルから北上し、キソロからキソロゲートを経て国立公園管理事務所(ヘッドクオーター)に達するルートです。この頃は前者のルートの方が早く国立公園の中に入れるので、こちらを使うサファリツアーが多いようです。

ヴィクトリア・ナイル

観光用ボートで白ナイルを遡る。

この国立公園を取り囲むように流れているナイル川。アフリカ最大の淡水湖ヴィクトリア湖から流れ出し、北方のエジプトで地中海に注ぐアフリカ最長の川でもあります。このあたりはヴィクトリア・ナイルと呼ばれ、東から西に流れ、この国立公園でぐるっと北方に大きく弧を描いて方向転換し、やがて大湿地帯に入ります。ここで再度東方向に流れを変え、スーダンでエチオピアから来る巨大支流の片割れ青ナイルと合流し、北方の地中海に向かうのです。

はマーチソン・フォールズ国立公園

マーチソン・フォールズ

ヴィクトリア・ナイルを中心に説明をしていきます。

何と言っても、この国立公園最大の見所は マーチソン・フォールズです。この滝は、河口部に近いカイロでは川幅が何 km にも及ぶあのナイル川が、川幅5,6 m 、落差約43 mで流れ落ちるという壮観なものです。増水期はもちろん渇水期においても相当な激しい勢いで飛沫が上がり、落下する水の轟音が辺りを振動させています。乾燥地には珍しくどんよりとした湿気が漂っています。

この滝は、ウガンダがかつて英国保護領だった頃、イギリス人ベイカー夫妻がこの地を調査した際「発見」し、当時イギリス地理協会長だったマーチソンにあやかってその名をつけたそうです。

しかしウガンダの独立後、アミン・ダダがクーデターによって政権を奪取した際、植民地的な名前をやめるということで、近くの部族名を取ってカバレガ・ホールズと改名しました。がしかし、アミン失脚と同時にまた旧名に戻されています。

デルタポイントの平原でサバンナサファリ

この国立公園でサファリをする場合、たいてい南西部のキソロゲートから入るのですが、その場合、国立公園の管理事務所で入園の手続きをし、直ぐ側のヴィクトリア・ナイルの波止場にたどり着きます。かつてはこの波止場からフェリーで対岸のパラ側へ渡りましたが、日本の企業が元フェリー乗り場の少し下流に架橋したので、いつでも自由に対岸に渡れるようになりました。

ヴィクトリア・ナイルを渡っていたかつてのフェリー。

ヴィクトリア・ナイルの南東側はだいたい樹林帯になっています。こちら側にはチンパンジーなどの住む森林もあり、多くの鳥類を見ることができます。とりあえず通常のサファリルートに従って見ていきましょう。この国立公園の中ではパラ・ロッジから西側のデルタポイントと呼ばれる地域はサバンナとなっていて、多くの草食動物が住んでいます。

とりわけディクディクの仲間(オリビ)が非常に多く、車を停めて見てるとあちこちから首を出してこちらを凝視しているのが散見されます。このままこのデルタポイントの平原を進んでいると、象やキリン、バッファロー、ウォーターバック、ウガンダコープなどのグループによく出会いますが、残念ながらシマウマには会うことができません(ここではシマウマは絶滅しています)。数は少ないですがライオンやヒョウなども見かけることもあるでしょう。

アミメキリン
バッファロー。このサバンナでは最強の草食獣グループだろう。
ウガンダコープ。ウガンダの固有種。
オリビ。ネコぐらいの大きさの臆病なレイヨウの仲間で、
番でいることが多い。
ジャクソンズハーテビースト
イボイノシシ♂。臆病な動物だが、この公園には肉食獣が少ないせいかあまり逃げない。

この平原を北上して北ゲートから公園外に出ることも出来ますが、デルタポイントのサファリ後、ヴィクトリア・ナイルの南側に移り、ナイル上流に沿って東北方向に疎林帯を抜け、マーチソン・フォールズの滝頭に行くことがおすすめです。

罠にかかり鼻を切断されたアフリカゾウ。他の個体に比べかなり痩せている。密猟の犠牲となるゾウは少なくないようだ。

いざ目玉のボートサファリへ!

もちろんこの国立公園最大の売りは、ヴィクトリア・ナイルのボートサファリです。ここのボートサファリにはパラロッジの下の船着場から発着するコースがいくつかあります。ボートサファリの会社によっての違いもあります。

一つはパラ・ロッジの運営する、比較的小型ですが眺望の点で非常に見やすいボートで回る サファリです。もう一つはウガンダ野生動物協会が運営しているボートサファリで、こちらは大型ボートですが乗客が多いので、船内を色々動き回らないと動物や鳥を見るのが難しい席もあります。

ウォーターバック。その名の通り、水辺が大好きなレイヨウの仲間。

昔、アミン大統領の頃には、至るところにそれこそ佃煮にするほどカバとナイルワニがいたのですが、その後食料難でカバやワニを捕食したため激減していました。しかし2020年に行った時には、カバはかつての2割程度は回復していました。ただし大型のナイルワニはあまりいませんでした。

カバの群れ。やっと最盛期の2割ほど増えてきていた。

船は川上にゆっくり遡ってゆきます。川辺で吸水する象やバッファロー、ウォーターバックなどを見ることができます。また拠水林にはワシやフクロウの類などの魚食性の鳥や、アジサシなどの群生をよく見ます。所々にカワセミの仲間(キングフィッシャー)の集住の崖があり、数十もの巣穴に出入りするカワセミや、彼らの捕食行動を観察できます。船は、こうした動物観察のスポットにとどまってくれます。

アフリカゾウのファミリー。日中は暑いので給水に来る動物が多い。
カワセミの仲間、キングフィッシャー。
土の露出した崖に掘られたカワセミの巣穴の群れ。

事前に頼んでおけば、マーチソン・フォールズ手前約500m にある岩場から上陸して、滝まで急な小径を登って見に行くこともできます。ただ、この小径は滝の飛沫の影響で非常に滑り易く、mまたツェツェバエが多いところです。

滝壺までは近づかない。右の崖を登る歩道があり、そこを上るグループもいる。

ボートサファリの所要時間は約2時間半ですが、最大の楽しみがウガンダ特産のナイルビールを飲むことでした。ナイル川を見ながらナイルビールを飲むなんてオツですよね。

ナイルビールはナイルがよく似合う。

ヴィクトリア・フォールズの滝頭

さて出発地に戻ってきたサファリボートからサファリカーに乗り換え、対岸に渡り車をヴィクトリア・ナイル東岸沿いに走らせると、約20分弱でマーチソン・フォールズ滝頭のすぐ上の駐車場に出ます。この駐車場にはツェツェバエの捕獲装置がたくさん吊るしてあり、びっしりとハエが捕まえられているのがわかるでしょう。ですから皆さんもできるだけツェツェバエに刺されない努力をしましょう。

ツェツェバエの捕獲装置。

このハエは黒い物を好むらしいので、頭髪の黒い我々日本人にはちょっと厄介ですね。できれば白い帽子をかぶったり首筋に白い手ぬぐいなどを巻くと良いでしょう。私もそういう努力をしたのですが見事に刺されたことがあります。

駐車場から滝まではせいぜい190 mほどなので、轟々たる滝の音を聞きながら滑りやすい道を徒歩で降ります。すぐに滝壺までのぞける展望台に出るので、たっぷり滝の轟音と飛沫を味わってください。

マーチソン・フォールズ展望台付近。橋桁の跡が残っている。

昔はこの滝の上を渡って対岸に行ける橋があったようなのですが、現在は橋桁を外して対岸に渡れないようになっています。しかし滝のすぐそばまで行き、そのまま滑って転落して亡くなる方が何人かはいたようですので、くれぐれもそばに近寄らないことをお勧めします。特に増水期は展望台あたりまで水が流れていますので、スリップには十二分にご注意ください。

滝は轟音を発し、生暖かい飛沫が降り掛かってくる。

ロッジについて

サファリに関してはどこのロッジに泊まるかによって相当コースが限られてきます。ここ十数年でいくつかのロッジが建ってきました。

パラ・ロッジ

この国立公園で最も早期に作られたロッジの一つで、かつての植民地(イギリスの保護領)時代にルーツがあります。ヴィクトリア・ナイル北西岸の河岸段丘上に建つ石造の外壁を持つ堅固な造りのホテルです。眺望の良さに加え、草食動物がここの庭を縄張りにしているようで、早朝、窓際に象の姿を見ることもありました。

私はアミン大統領の頃にもここに泊まったことがあります。基本的にはその頃からあまり変わっておりませんが、見晴らしがいいだけでなく、耳をすませばマーチソン・フォールズの轟音がかすかに聞こえて来ます。

ヴィクトリア・ナイルの川岸に建つパラ・ロッジ。

自家発電で、通電時間は制限されますが、エアコンも使えます。食事も、ウガンダでは最高級と言っていいでしょう。ボートサファリも経営していて、少人数でのプライベートボートサファリなども手配してくれます。許可が必要ですが、ナイル川での釣りも可能です。

落ち着いた造りのパラ・ロッジ。サファリ用のボート乗り場のすぐそば。
パラ・ロッジ側のボートサファリ用波止場。赤道直下であることを示す巨大な地球。

ハクバ・ロッジ

白ナイルが大きく湾曲し半島状になった部分のデルタポイントの平原に近年作られたロッジです。木造のプレハブのような作りで、夜間には肉食獣の吠声や隣棟の音などがよく聞こえます。

ここは家屋の配置があまり良くなく、食堂からは外部がよく見えません。客室の多くは眺望が悪く、泊まるだけでしたら十分ですが、部屋に居乍らにして野生動物やアフリカらしい景色を見るには適していないようです。

ベイカーズ・ロッジ

ヴィクトリア・ナイル南岸の樹林帯に囲まれているロッジ。眺望の点ではおすすめできませんが、料金的には北岸のロッジよりリーズナブルです。エコを売り物にしているので、体験したい方はどうぞ。

この付近の最大の難点はツェツェバエがいることです。蚊取り線香は必携です。 

旅のチップ

この国立公園の隠された楽しみ。それは、マーチソン・フォールズのさらに上流にある急流地帯に建つチョベ・ロッジでのモーニングティー体験でしょう。

ウガンダ北部の大都市グルから車で30分ほどの国立公園北東端付近にこのロッジはあります。 旅程上グルに宿泊予定の方はちょっと足を伸ばせば、ナイルの急流を眺めながらモーニングティーやアフタヌーンティーを楽しむことができます。

できれば北東端のカルマゲートから入り、モーニングティーをチョベ・ロッジで楽しんでいただいて、その後マーチソン・フォールズ滝頭を見物、そしてボートサファリに出かけるという旅程をお勧めします。

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川田秀文
有限会社シーピーシー 代表
1970年代より東アフリカに足しげく通い、スワヒリ語の基礎を受講。 1980年代初頭に北京語言学院(現北京語言大学)に「現代中国」理解のため留学。その頃、対外開放都市(外国人が許可なく立ち入りできた町)で写真を撮りまくる。 帰国後、それらの写真をもとにストックフォトライブラリーのCPCphotoと編集プロダクションCPCを起ち上げる。 渡航先は下記の通り。 アメリカ・インド・ウガンダ・ウズベキスタン・エストニア・エチオピア・カザフスタン・カナダ・韓国・キルギス・ケニア・シンガポール・ジンバブエ・タイ・台湾・タンザニア・中国・ドイツ・パキスタン・フィンランド・フランス・ベトナム・ベラルーシ・ベルギー・ボツワナ・香港・マカオ・マレーシア・南アフリカ・モーリシャス・モンゴル・ラトビア・ルワンダ・ロシア 三国志・漢文・観光学が得意。 国立埼玉大学生化学科卒(理系) [職歴] 地球の歩き方の取材編集を35年。 シェアハウス『歩き方ハウス』運営。 元国立山梨大学非常勤講師、国学院大学文学部史学科特別非常勤講師など多数校で講演。