「歩き方カルチャー教室」はじまります!

宮川 洋三 自己紹介

宮川洋三 プロフィール画像

宮重

はじめまして、宮重です。今日は宜しくお願い致します。

宮川

はじめまして。宮川です。こちらこそよろしくお願いします。

宮重

それではまず初めに、宮川さん自身の自己紹介を簡単にお願いします。

宮川

宮川 洋三(みやかわ ようぞう)です。

1972年に埼玉大学を卒業し、その後、東京都立大学大学院理学研究科博士課程を修了、学位(理博)を取得しました。

1983年には山梨医学大学(現山梨大学医学部)助手に就任し、2002年に山梨大学工学部 生命工学科に移籍し、教授に就任しました。

2015年に生命環境学部を定年退職し、翌年の2016年の名誉教授となりました。

生化学、分子生物学、”ヒトに病気を起こす微生物”(病原微生物、感染症)を専門に研究しており、欧米の国際氏に多数の論文を発表しました。

宮重

山梨大学で教授をなされていたのですね。大学では具体的にどのようなことを教えいらっしゃったのでしょうか?

宮川

私は5年前(2015年)にすでに山梨大学を定年退職しまして、その後は同じ大学で非常勤講師を勤めております。

定年後のこの5年間も含め、一貫して微生物学(とくに病原性真菌)の研究と教育に携わってきました。

講義内容は生命科学全般、とくに微生物についての話です。

なかでも“ヒトに役立つ微生物”、例えばパンや味噌・醤油、お酒などの“発酵生産品”のお話しや“ヒトに病気を起こす微生物(病原微生物)”、例えば大腸菌O157や昨今のコロナウイルスなどによる各種感染症についてお話ししました。

宮重

微生物と言われると、ミジンコやゾウリムシ、ミドリムシなど中・高校の生物で学んだものを思い浮かべていました。ヒトに役立つ微生物というのもがあるのですね!

真菌び研究をしていらっしゃるとのことですが、具体的にはどのようなことをされているのでしょうか。 

 

宮川

これまでよく市民セミナーなどでの自己紹介で「“シンキン”の研究をしています」 というと、(医大に所属の当時はとくに) 「心筋梗塞のご研究ですか?」 と聞かれました。その度に 「いや“シンキン” というのは真菌のことで・・」 というと決まって皆さんの頭の中は 「???」 となってしまいます。

そこで私は 「毎日食べるパン、そしてビールもワインもみな、その原料は酵母菌、これが真菌です。私の研究の対象もその真菌です。ただし、真菌といってもヒトに役立つ酵母ではなく、ヒトに病気を起こす “病原性真菌” の研究です。足の指がカイカイになる、あの“水虫菌”、これも病原性真菌ですよ」 と説明すると、そのとたん、皆さん異口同音に、「やっとシンキン感がわいてきました!」 と。

確かに、いきなり”シンキン”と言われるとすぐに「真菌」だと思わないですよね(笑)

宮川さんのお話を聞いて、身近にある具体的な菌の例を知り、興味が湧いてきました。

最後に読者の方への一言何かありましたらよろしくお願い致します。

宮川

 定年退職直後に私は永年所属してきた日本医真菌学会から“学会賞”なる名誉ある賞をいただきました。その“受賞記念講演”のタイトルは 「病原性酵母から学んだこと」 。

私の研究の相手は病原性酵母の代表といわれるカンジダ菌。私たち健康人に“共生する”常在菌で、同時に病原菌なので、“共生病原体”と呼ばれます。英語の論文では “Commensal Pathogen”. 辞書で”Commensal”を紐解くと、「(ヒトと)食卓を共にする」 とあります。

私たち健康人には100種100兆個の菌が“正常フローラ”として共生しているといわれますが、人類誕生以来、彼らは一貫して私たちヒトと「食卓を共にして」生きてきたのです。そのかなりの部分を“悪玉菌”が占めています(「本文」中の図2.1を参照)。病原性酵母はそのひとつかもしれませんが、“悪いこと” ばかりではありません。その代表とされるカンジダ菌などは常在菌としてすでに健康人の体内で “縄張りを張って” 定着しており、しかも一般細菌の生育にとっては不利な、かなりの酸性環境を維持しつつ棲息する性質をもっているため、外界からの病原細菌の侵入・定着を未然に防ぐのに大いなる貢献をしているのです。外来微生物にとっては “取り付く島がない” といったところです。

カンジダ酵母のほかに酸性を好む菌として、バター(そのギリシャ語の語源はbutyrum, boutyron)中に多く含まれ、 特有のニオイを放つ酪酸を産生することで知られる酪酸菌(Clostridium butyricum)があります。食中毒菌のうちで“致死率”がもっとも高いことが知られているボツリヌス菌(Clostridium botulinum)と同じ仲間(属)ですが、病原菌に対する抗菌作用を示したり、ビフィジス菌のような腸内の有用乳酸菌の増殖を促進するなど、強い整腸作用をもっており、“腸内フローラの有用菌” のひとつに加えられていています。

このように、“正常フローラこそ わが健康の賜物”といえます。100種100兆個といわれるこれら生体内の先住者たちに(たとえ専ら“病原菌” “悪玉菌”の汚名を着せられている者たちも含め)感謝こそすれ、“排除します!” などの暴言は厳に慎むべきでしょう。古来より東洋にある“善悪一如”との考え方を想起させるものでもあります。よって私たちは、彼ら“同居(共生)微生物”には決して「足を向けては寝られません!」(近頃はそんなことばかり考えているためか、毎晩どちらを向いて寝ればよいのやら、寝つきが悪くなって困っています)。 

冗談はさておき、私たち健康人に100種100兆個もの“正常フローラ”が同居(共生)しているという事実はいったい何を意味するのでしょうか?

「本来外敵とされている自己とは異なるもの(病原体など)を自己(宿主=つまりは私たちヒト)の体内に受け入れれ共生させることにより、宿主はいっそう強くなった」。ということです。

例えば、私が ”能動的(積極的)共生Active Commensalism” と呼ぶワクチン(BSG, インフルエンザ・ポリオワクチン等) は みな自己とは異なるものですがそれを予防注射・接種として体内に取り込んできました。そのおかげで私達はこれまで健康体として生きてきたのです。

”能動的(積極的)共生 Active Commensalism”については、本文をお読みいただけば、この考え方が ”日々私たちが健康に生きるため“ だけでなく、じつは ”地球社会全体がより良く生きるため” の、そして “「地球の歩き方」を知るため“ の、大変貴重な “智慧の源泉” にもなっている点にあることが、よくおわかりいただけると思います。じつは、これこそが、私が「病原性酵母から学んだこと」であり、同時にこの「歩き方ハウス通信」の “そもそもの立ち上げ意義” にも関係してきます。理解いただけると幸いです。

宮重

ありがとうございました。これから宮川さんの書かれた記事を読むのが楽しみです。よろしくお願いします。

宮川

こちらこそ、よろしくお願いします。