はじめまして。こちらこそよろしくお願いします。
それでは、始めていこうと思います。小野さん簡単に自己紹介をお願い致します。
小野 博(おの ひろし)です。 1945年生 中国旧満州で生まれましたが、小学生から東京です。子どもの頃から、魚を飼うことや機械をいじることが大好きで、創意工夫で色々な「発明」をしてきました。写真と旅も好きです。
慶応大学の工学部出身なのですが、最初の就職では医学部耳鼻咽喉科の助手となり、声や耳の研究に加え、補聴器の研究で医学博士号を、個人研究として骨導マイクロフォンの研究で工学博士を取得しました。
一貫して「コミュニケーション」に関心を持ち、勤務先が変わっても関連する分野での研究テーマを探し実践的研究を続けてきました。
その後、大学入試センター在籍時には大学生の学力低下問題に取り組み、リメディアル教育学会を発足させ、個人的には特に日本語力の低下問題が重要だと考え、その対応策を研究するなど、勤務先が変わればたくさんの新しい研究テーマが浮かび、大変面白く研究をしてきました。
すっ、すごいですね。聞きたいことがたくさんあります!
工学部なのに医学部!主に耳に関する研究をされているようなのですが、具体的にはどのようなことをなされていたのですか??
耳鼻科では、最初に喉の病気、声の出し過ぎ時にできる声帯ポリープや声帯結節(歌手や教師がなる)で声が出し難い方の音声の分析や治療中のモニターなどの研究を行いました。
耳の領域では難聴と補聴に関する基礎研究を行ないました。また、騒音下でも普通に通話ができるイヤーマイク(骨導マイクロフォン)を開発しました。
騒音下でも普通に通話ができることは、私たちの生活でとても大切なことですよね。
「大学生の学力低下問題の中で日本語力の低下問題」について研究をされているとのことですが、この分野に興味をもったきっかけは何でしょうか?
この分野に興味をもったきっかけは、ずいぶん古い話です。
最初は、東京学芸大学在職中に、海外子女教育に関心を持ちました。帰国子女には日本語ができな子どももいるが、どの程度なのか、どの程度だと授業が理解できないかを調べることを研究テーマにしたことです。
そのために、大規模な日本人の小・中学生の日本語力の発達の全国調査(1989年報告書)を実施し、そのデータを利用したテストを開発しました。
また、帰国子女、日本の学校に在籍する外国人子女の日本語力・外国語力調査を実施し、以下のようなことが分かりました。
・帰国子女・外国人子女の場合、来日した児童・生徒が通学する日本の学校における学年に比べ、母国語力が3年より低いと、学習言語としての日本語の習得は非常に難しく、特別なプログラムを作る必要があります。
・英語圏・中国からの帰国子女には、日本語力・英語力(中国からの場合は中国語力)が共に低い児童・生徒がいること。
・母語力(今まで受けてきた言語)が学齢に比べ「3学年以上」遅れていると授業についていけず日本語学習が困難であること。
その後、大学生の学力低下が問題となり、自前のテストが必要となってきたので高校生の大規模調査(1992年)を実施し、小学生レベルから高3レベル以上までの基準に基づいた日本語IRTテスト(別のバージョンのテストを受けても同じ評価になるテスト)を開発しました。
これは、現在、NHKエデュケーショナルから市販しています。
海外・帰国子女の言語力については、「バイリンガルの科学(講談社ブルーバックス1994年)」をご参考ください。
後に、1995~1996年にハワイ、英国に住む全日本人生徒(小・中・高校生)の日本語・英語力調査を実施(NY慶応高校を含む)しました。日本語力が低いと英語力の習得が悪いことも分かりました。
大学生への学力低下に対応するため、2005年に日本リメディアル教育学会、大学生をグローバル人材に育てるため、2013年にグロバル人材育成教育学会を設立し現在に至ります。
以前、帰国子女や外国籍の子どもたちの日本語の問題は新聞などで特集していました。大学生の学力問題も色々な場面で耳にします。なので、小野さんが書かれた論文、とても興味深かったです。
最後に、読者の方への一言がありましたらよろしくお願いします。
今まで実施した日本語力の調査、大学生の学力低下、グローバル人材の育成から、イヤーマイクの発明や新しい音声の音質改善法まで、この75年の活動を振り返り、話を勧めたいと考えています。
また、今、興味を持っているのは地頭の育成法です。地頭とはどういうものか、何に役立つのか、子育てや就活に役立てる方法は? 地頭の善し悪しを測定する方法はあるか、などについても述べていこうと考えています。
はじめまして、小野さん。宮重と申します。今日はよろしくお願い致します。