「歩き方カルチャー教室」はじまります!

『偽薬飲まされても面白い中国』~諏訪 一幸~

キャッチフレーズが『偽薬飲まされても面白い中国』。このフレーズからも面白そうなにおいがプンプンします。どんな方なのでしょうか?

宮重

諏訪さん、初めまして。宮重と申します。本日は短い時間ですが、よろしくお願い致します。

諏訪

初めまして、諏訪です。よろしくお願いします。

宮重

まずは、簡単に自己紹介をお願いします。

諏訪

 諏訪 一幸(すわ かずゆき)です。現在は、静岡県立大学で中国について教えています。

 大学生だった頃は中国語を専攻しており、大学卒業後の1986年から2004年まで外務省で勤務をしておりました。その後、2004年から2008年まで北海道大学で教員をし、今に至ります。

 私は「毛沢東の葬儀で、中国の人々が涙を流す」映像に衝撃を受け、中国世界へ入りました。初めて中国に上陸したのは1979年の9月のことです。今まで、合計14年間中国で暮らしてきました。

 「6.4天安門事件」が発生した時、SARS流行期に北京に滞在していました。

宮重

 天安門事件のときに中国にいたのですね!?私の中では歴史の教科書の中での出来事だったので驚きです!今度、詳しく教えてください。

 現在、静岡県立大学で教授をされているとのことですが、どのようなことを教えていらっしゃるのでしょうか?簡単にご紹介いただけますか。

諏訪

 国際関係学部で、中国(中華人民共和国)の政治と外交、それから日中関係に関する授業を3つ受け持っています。3つの科目名は「中国政治外交史」、「現代中国政治」、「中国が抱える諸問題」です。

 日本の中高教育(人文社会科学)には、現代社会について教えないという大きな欠陥があります。また、私の所属する学部には中国人留学生もいますが、中国の教育には、自国にとって都合が悪いことは教えないという、これまた深刻な問題があります。

 そうした空白部分を埋め、日中大学生の相互理解を深めることつながる授業を目指しています。また、近年は香港や台湾の動きも注目されてきているので、「一国二制度」や「統一」問題にも、目を向けています。

 今年度(2020年度)は、コロナウイルス感染の影響で、オンライン授業となっています。教員も、学生も疲弊しきっています。また、日中間で自由な往来もできない。早期正常化を切に願っています。

宮重

 言われてみるとそうかもしれません。私も、今まで現代社会について学校で深く学んだ記憶があまりないです。歩き方ハウス通信で日本と中国の双方の実態を知っている諏訪さんだからこそ、書ける記事が読めることが楽しみです。

 映像から中国に興味をもったとのことですが、中国のどのような部分が諏訪さんをそんなにも引き付けているのでしょうか?中国の魅力とその理由も含めて教え下さいますか。

諏訪

 今の中国を見ていると、正直なところ、「魅力なんてあるのだろうか?」と思ったりもします。だから、という訳ではありませんが、私の場合は、「魅力がある」というより「興味が尽きない」ですね。

 先ほどもお話した通り1979年から2004年までの間に、計14年間、中国語圏に滞在しました。6.4天安門事件やSARS時には北京におり、日本と中国の違い、とりわけ政治面での大きな違いを肌で感じました。

 「著者一覧」のキャッチフレーズに、「偽薬飲まされても面白い中国」と書きました。
1990年代の初めだったと思います。北京勤務当時に風邪をひき、漢方薬を買って飲んだら、ひどい目にあいました。舌が膨れて、呼吸困難になったのです。幸い大事には至らなかったのですが、このことをある中国政府関係者に話した時の彼の反応に、面食らいました。ひとしきり大笑いしたのち、言ってのけたのです。「諏訪さん、偽薬のんだらダメですよ!」。これって、面白くありませんか?

宮重

 私、諏訪さんのキャッチフレーズを見て、「どういうことなんだろう?」とずっと疑問に思っていたんです。そんな経緯があったんですね(笑)
ますます、中国に興味が湧いてきました。

 最後に、読者の方へ何か一言がありましたらお願いします。

諏訪

 中国政治についてお話しできればと思います。もっとも、これを真正面から論じても、ちっとも面白くないでしょうね。ましてや、私の唯一の愛読紙は、中国共産党の機関紙『人民日報』ですから。

 中国は西側社会ではヒールになってしまいました。「中国が如何にけしからんか」を語れば、溜飲は下がるし、売れます。でも、それが私たちにとって生産的だとは思いません。彼らには彼らなりのロジックがあります。まずはその辺を理解したうえで、「けしからん」の声を上げ、「さて、どうする?」となるのが筋です。

 中国は変化が速く、大きく、そして、何よりもアナーキーです。ですから、偽薬に懲りた私は、製造元をしっかり確認したうえで、漢方薬を買うようになりました。悪くありません、初期の風邪薬「板藍根」(バンランコン)。

 今の中国について、旅での見聞を含め、軽いノリで書かせて頂きたいと思います。よろしくお願いします。