ウガンダ
定刻通りバスは隣国のウガンダの首都カンパラのホテルを出発した。これから国立公園観光に行くのだ。
ところがバスはあっちに行ったりこっちに行ったりなかなか町を出ようとしない。つまり国立公園に行くまでのガソリンがないため、あちこちのガソリンスタンドを回って給油していたのだ。
やっとランチにありつけたころには午後3時をとっくに回っていた。途中ふとバスの外を見ると、
「え!? え!? え!?」
道端で警官が住民をこん棒で殴りつけているではないか。
「そうか、この国は今、元ボクサーのアミン大統領が政権をとっている。」
そのせいかどうかは知らないが、国中がやけに緊張感に包まれている。
特にウガンダはアフリカの中でも内陸にあたるため、物資が足りなくなるらしい。そのため観光バスですらガソリンがないのだ。
そうこうしながらもやっとの思いでバスはカバレがホールズ(現在名マチソンフォールズ)国立公園のパラロッジに着いた。
こんな政情不安の中よくたどり着いたという感じだ。
かなり遅い時間の夕食となったが、こんな時に無事着いただけましだ。
そう思って食事をとっていると、隣の席で日本人のおじさんたちの大きな声が聞こえてきた。
このおじさんたちバスの中でも飲んで騒いでいたようだが、ホテルでも傍若無人だ。
そしてさっきから現地のウエイトレスを呼びつけて怒鳴りつけている。
どうやらビールが冷えていないと文句を言っているようだ。
こんな時に無事にホテルに着けて夕食にありつけただけでもありがたいのに、なんて日本人だ。と思っていたら、「ビールを冷やして飲むのは日本人だけらしいよ。」ととなりの友人がささやく。
ならなおさらみっともないおじさんたちじゃないか。同じ日本人として恥ずかしい。
と思っていたら、中庭の方に別の国の客たちが集まっている。
そちらのほうに足を向けると、ドイツ人やイタリア人の人たちだ。みんな楽しそうにお喋りしながら、他のグループとも打ち解けていく。そしてはじめドイツの人たち全員であの有名なドイツの歌曲「ローレライ」を歌い始めた。
次はイタリアの番だ。イタリア人は独唱で一番有名なあのイタリアの曲「オーソレミオ」を歌い始めた。
さて、次は日本の番だ。
「日本で誰もが知っている有名な曲って何だ?」みんなで頭を寄せあって考えたが何も浮かばない。こんな時に何で日本にはいい曲がないんだよ。
と思ったが結局、みんなで童謡を歌ったのを覚えている。
そしてドイツ、イタリア、日本人は夜遅くまで楽しく語り合った。
翌日の観光ツアーはカバレガホールズ(現在名マチソンフォールズ)へ向けワニとカバのいっぱいいるナイル河をボートサファリ。
河をボートでのぼり船を降りて岩の上に登ると大きな滝壺にたどり着いた。
その滝壺の水量たるや、一度にこんなに水を出したら地球が枯れちゃうんじゃないかと思うほど。
どどどどどどどーっ!
とすごい音をたてて流れていた。